超音波検査士試験対策の参考書を読んでいると、聞きなじみのない言葉が沢山ありますよね。
おや、こんな設定あるの…?と思って超音波検査士研修ガイドラインを確認してみたらしっかり記載されてあったり。
今回は、超音波装置の設定項目にある「リジェクション」について書かせていただきます。
言葉を見たことはあっても、「何を調整しているのか分かりにくい」「ゲインや他の設定とどう違うのか曖昧」という方も多いのではないでしょうか。
リジェクションは、簡単にいうと弱い信号をどこまで表示するかに関わる設定です。
この記事では、超音波装置におけるリジェクションの基本的な考え方を、私なりに整理してみました。
あわせて、実際にリジェクションを調整した画像の比較も交えながら、画像の見え方がどう変化するのか、ゲインとは何が違うのか、調整するときの注意点は何かを解説します。
超音波検査のリジェクション(Rejection)とは?
一言で言うと「診断に不要なノイズや情報を取り除き、見たい部分をはっきりさせるフィルター機能」のことです。
今回は私が普段使用している、富士フイルムARIETTA750を例に、
どのような機能があるか書かせていただきます。
画面の「ザラつき」を消す(階調調整)
Bモード(断層像)やドプラ波形を表示する際、画面全体にうっすらと乗っている低い輝度のノイズをカットします。
仕組みの一例としては、輝度の明るさを決める「ガンマカーブ」というグラフの立ち上がり位置を変更します。
設定値を大きくするほど、暗い信号が切り捨てられ、背景が真っ黒に引き締まります。これにより組織の輪郭や波形の形がクッキリと浮き上がります。
「ブレ」や「砂嵐」を抑える(エラストモード)
組織の硬さを色で表すエラストモードでは、画像が乱れないように2つのリジェクションを使い分けます。
フレームリジェクション(Frame Rejection): 手ブレや加圧の不安定さで激しく乱れた画像(フレーム)そのものを自動で取り除き、安定した画像だけを表示します。
ノイズリジェクション(Noise Rejection): 画像の中に現れる砂嵐のような細かい点状のノイズを消去します。
どちらもレベルを上げるほど、より強力に不要なデータが除去されます。
「邪魔なもの」を透かして見る(3D/4D)
お腹の中の赤ちゃんの顔を見る際、胎盤や子宮壁が顔に密着していると顔が隠れて見えません。これを解決するのが「プラセンタリジェクション(Placenta Rejection)」です。
仕組みとしては、境界付近の不透明度(Opacity)を下げることにより、手前にある邪魔な組織(胎盤など)を透かしたり取り除いたりしやすくすることで、赤ちゃんの顔をきれいに描き出す効果があります。
「計算ミス」を防ぐ(解析機能)
計測データに、明らかに異常な値や不要な数値が含まれないように除外します。
速度を計算する際、動きが「0」のポイントを計算に含めないように設定したり、心電図信号の中で、解析に適さない不要な波形(R波)を無効にします。
リジェクションは「消しゴム」や「フィルター」のようなもの→新たな疑問が
何となくリジェクションについて理解できたと思います。
ここで新たに気になることが浮かびました。
フィルター…ウォールフィルタの違いって何なの?という疑問です。
ウォールフィルタ(Wall Filter)とは
「血管の壁がモゾモゾ動くノイズだけを取り除いて、中の血流を見えやすくする機能」と理解すると分かりやすいでしょうか。
リジェクションとウォールフィルタの違いは?
「リジェクション」と「ウォールフィルタ」は、どちらも不要な情報を取り除き、診断に必要な信号を際立たせるための機能ですが、「何(どの信号)を取り除くか」という対象と、その「仕組み」が大きく異なるようです。
主な違いを挙げてみます。
取り除く対象(ターゲット)の違い
リジェクションは、主に「低輝度のノイズ」や、診断に不要な「不安定なデータ(フレームや領域)」を対象とします。
画面全体に乗っている背景のザラつきや、手ブレなどで乱れた弾性像などをカットするために使用されます。
一方ウォールフィルタは、血流信号を表示する際に邪魔になる「壁運動(血管壁や組織の動き)による不要な信号(クラッタ信号)」を対象とします。
血管の壁そのものが動くことで発生する強いドプラ信号を除去し、純粋な「血流の情報」だけを抽出するために使用されます。
仕組み(フィルタリングの基準)の違い
リジェクションは「明るさ(輝度)」や「データの安定性」を基準にします。
例えば、ガンマカーブの設定では「立ち上がり位置」を調整し、ある一定の明るさ以下の信号を根こそぎカットします。
ウォールフィルタは、「周波数(動きの速さ)」を基準にします。
血流に比べて組織(壁)の動きは遅いため、低周波成分をカットするフィルタをかけます。レベルを上げると、より高い周波数(より速い動き)の成分まで除去されるようになります。
それぞれ対象となるモードが違う
リジェクションはBモード、Mモード、ドプラ、エラスト、3D/4Dなど全般で、
ウォールフィルタはカラードプラ(CF/PD/eFlow等)、パルスドプラ(PW/CW)が対象となるモードと整理すれば良さそうです。
実際にリジェクションを設定してみました
では実際に設定すると、どのような画像が見えるのか?今回も自分の肝臓をスキャンしながら試してみました。
先ずは何も設定していない画像

次にリジェクションを最大限まで上げてみました。

信号がある部分とない部分の差が極端になり、画像が「硬く」なりすぎてしまった印象です。ダイナミックレンジを下げて、かつゲインを下げたイメージでしょうか。
これだと診断に必要な階調が失われてしまいますね…私のスキルでは評価が難しいです。
リジェクションはどんなときに意識するとよい?
実際の現場では、リジェクションを最初から大きく動かすというより、基本設定を整えたうえで必要に応じて微調整する場面が多いと思います。
どんなときに意識しやすい設定なのかを知っておくと、やみくもに触らずにすみます。
正直今は本当にエコー機の性能が良いので、触る必要ないのでは?という気持ちです。
もし設定するとすれば、
- ゲイン or TGCで明るさを調節
- ダイナミックレンジで硬さを調節
その上で、背景のざらつきが気になるのであれば…といったところでしょうか。
エコー機の性能が本当に素晴らしいので、あまり調節することは無いかもしれないというのが個人的な感想です。
リジェクション・ゲイン・ダイナミックレンジの違いは?
ここで新たな疑問が出ました。改めて3つの違いを整理しましょう。
ゲイン (Gain)
役割: 受信した超音波信号の増幅率を調整します。
画像への影響: 画面全体の明るさを直接変える機能です。
種類: Bモードゲイン、Mモードゲイン、ドプラゲイン、カラードプラゲインがあり、それぞれ個別に調整可能です。また、深さごとに調整するTGC(Time Gain Compensation)といった機能もあります。
ダイナミックレンジ (Dynamic Range)
役割: 表示できる信号強度の幅(階調の範囲)を設定します。
画像への影響: 画像のコントラスト(白黒のグラデーション)を制御します。Bモードでは通常40 dB~90 dBの範囲で調整可能です。
対象: BモードやMモードのほか、パワードプラや組織ドプラ(TDI)などでも設定項目が存在します。
3つの違いをざっくり説明すると、
ゲインは「どれだけ増幅するか」、ダイナミックレンジは「強弱をどれだけ細かく分けるか」、リジェクションは「どこから下を切り捨てるか」という違いの理解で良いのかなと思います。
なので、
- ゲインで全体の見やすさを整え、
- ダイナミックレンジで組織の質感を出し
- リジェクションで不要なノイズを抑える
という使い分けになります。
まとめ|リジェクションは弱い信号をどこまで残すかを調整する設定
リジェクションは、画像をすっきり見せるために役立つ一方で、弱い情報まで落としてしまう可能性のある設定です。
そのため、「ノイズを減らす便利な機能」とだけ捉えるのではなく、何を残して何を捨てているのかを意識しながら使うことが大切だと思います。
今年度の超音波検査士試験日程が発表されましたね!
正直リジェクションについて出題されるか?うーん…といったところですが
こういう機能もあるんだなーと思っていただければ!
最後までお読みいただきありがとうございました。

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