【JSE2026参加レポ】心エコーの未来を感じた3日間|拡張能評価・AI・臓器うっ血の注目ポイント

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2026年心エコー図学会学術集会会場 日記

2026年4月24日〜26日に、奈良春日野国際フォーラム甍で開催された
日本心エコー図学会第37回学術集会(JSE2026) に参加してきました。

jse2026会場までの道のり
奈良公園に会場がありました。晴れて気持ち良い気候。

前回の記事では、参加前の「見どころ」をまとめましたが、実際に参加してみると、やはり現地ならではの熱量がありました。

今回、特に印象に残ったのは以下の4つです。

  • 左室拡張能評価の新しい考え方
  • AIが心エコーに与える影響
  • 心臓だけでなく「臓器うっ血」をみる流れ
  • 一般演題の面白さと、現場から生まれる工夫

特に左室拡張能評価については、2025年に改訂されたASEの新しいアルゴリズムをめぐって、期待と同時に限界についても活発な議論がありました。

この記事では、JSE2026に参加して印象に残った内容を、心エコーに携わる検査者の目線でまとめてみました。

参加前に注目していたポイントは、こちらの記事でまとめています。
関連記事:JSE2026の見どころ|心エコー図学会で注目したいテーマまとめ

左室拡張能評価の新しい「共通ルール」が大きな注目テーマに

今回の学会で大きなテーマの一つだったのが、
2025年に改訂されたASEの左室拡張能評価ガイドライン です。

2025年版ガイドラインの変更点や、2016年版との違いについては、以下の記事で詳しくまとめています。
関連記事:JASE左室拡張能評価ガイドライン2025|2016版から何が変わった?

従来の2016年版では、実臨床で「判定不能」となる症例が少なくありませんでした。
そのため、新しいアルゴリズムでは、よりシンプルに、できるだけ判定不能例を減らす方向で整理されています。

新しい指標として左房ストレインが重要に

新しい評価では、
左房リザーバーストレイン が重要な指標として取り入れられています。

左房ストレインは、左房がどれだけ伸び縮みするかをみる指標です。
心不全、特にHFpEFの評価において、左房の機能をみることの重要性が高まっていると感じました。

一方で、左房ストレインは装置や解析ソフトの環境に左右される部分もあります。
そのため、すべての施設で日常検査としてすぐに取り入れられるかというと、まだ課題もある印象です。

2025年版アルゴリズムの課題|HFpEFを見逃す可能性

新しいアルゴリズムは、判定不能例を減らすという点では非常に意義があります。
しかし一方で、HFpEFの診断においては、偽陰性のリスク が指摘されています。

つまり、実際にはHFpEFであっても、心エコー上は「正常」あるいは「Grade 1」と判定されてしまう可能性があるということです。

心エコーだけでHFpEFを否定するのは危険

改めて心に留めておかなければならないことは、
心エコーのアルゴリズムだけでHFpEFを否定してはいけない
という考え方です。

左室充満圧は、心エコーで完全に一点で推定できるものではありません。
あくまで複数の指標から「上がっていそうか」「正常そうか」を推定しているにすぎません。

特にHFpEFでは、安静時には左房圧が正常範囲に見えても、運動時や負荷時に上昇する症例があります。
そのため、心エコー所見だけでなく、症状、既往、併存疾患、NT-proBNPなどを含めて総合的に判断する必要があります。

VMTスコアは実臨床でも取り入れやすい補助指標かもしれない

今回、個人的に興味深かったのが
VMTスコア です。

勉強不足故、初めて知りました…

VMTとは

VMTは、僧帽弁と三尖弁の開放タイミングの差を視覚的に評価する方法
です。

僧帽弁と三尖弁の開放タイミングを見る

心尖部四腔断面で、僧帽弁と三尖弁の開放タイミングを観察します。

通常、三尖弁が先に開く場合は、左房圧が高くない状態を示唆します。
一方で、僧帽弁と三尖弁が同時に開く、あるいは僧帽弁が先に開く場合は、左房圧上昇の可能性を考えます。

さらに、下大静脈径の評価を組み合わせることで、左室充満圧上昇の推定に役立つ可能性があるとの事。

専用ソフトがなくても評価できる点が魅力

左房ストレインは装置や解析ソフトに依存します。
一方で、VMTスコアは視覚的評価が中心であり、専用ソフトがなくても確認できます。

もちろん、評価の再現性や慣れは必要ですが、
「日常検査の中で少し意識してみる」
という意味では、取り入れやすい補助指標だと感じました。

私自身も、今後の検査で意識して活用してみたいと思います。

AIは心エコーをどう変えるのか

今回のJSEでは、AIも大きな注目テーマの一つでした。

AIというと、まず自動計測を思い浮かべます。
しかし、今回の議論ではそれだけでなく、
自動読影やレポート作成、疾患の拾い上げ まで視野に入っていました。

AIは自動計測からレポート作成へ

複数の心エコー動画から、AIが自動で所見を整理し、レポート案を作成する。
そのような技術が進めば、将来的にはスクリーニング検査や専門医不在の施設で大きな助けになるかもしれません。

特に心不全や心アミロイドーシスのように、見逃しを避けたい疾患では、AIによる拾い上げが期待されています。

AI時代だからこそ、検査者の力が必要になる

一方で、AIが発展すれば検査者が不要になる、という話ではないと感じました。

むしろ重要になるのは、
AIが出した結果を正しく判断できる力
です。

AIが間違えたときに気づけるか。
複雑な症例で、どこを追加で見るべきか判断できるか。
患者背景と画像所見をつなげて考えられるか。

AI時代だからこそ、検査者にはより深い理解が求められるのだと思います。

心臓だけじゃない|臓器うっ血を評価する時代へ

もう一つ印象に残ったのが、
心臓だけでなく、全身のうっ血を評価する流れ です。

心不全の評価では、心臓の収縮や拡張だけを見るのではなく、
「その結果、全身にどのくらいうっ血が起きているのか」
を評価することが重要になります。

その中で今回注目されたのが、VExUSスコアや肺エコーです。

VExUSスコアとは?静脈うっ血をエコーで評価する方法

VExUSは、
Venous Excess Ultrasound の略で、静脈うっ血の程度を評価するエコー指標です。

下大静脈だけでなく、肝静脈、門脈、腎静脈の血流波形を組み合わせて、全身の静脈うっ血を評価します。

こちらも初めて知りました…勉強します。

まず下大静脈径を確認する

VExUSでは、まず下大静脈径を確認します。

下大静脈径が2cm未満であれば、基本的には高度なうっ血は考えにくく、グレード0と評価します。

一方で、下大静脈が拡張している場合には、肝静脈、門脈、腎静脈のドプラ波形を確認します。

H3:肝静脈・門脈・腎静脈の波形を見る

各臓器の静脈波形に異常があるかを確認し、重度異常波形の数によって、うっ血の程度を評価します。

ざっくり整理すると、以下のような考え方です。

評価内容
グレード0うっ血なし
グレード1軽度のうっ血
グレード2中等度のうっ血
グレード3重度のうっ血

VExUSも専用ソフトが不要で、ドプラ評価を組み合わせて判断できる点が魅力です。

心エコーだけでなく、腹部領域や血管領域の知識もつながってくるため、複数領域をみる検査者にとっては非常に面白いテーマだと感じました。

肺エコーも心不全評価でさらに重要に

肺エコーも、心不全診療の中でますます重要になっている印象でした。

特にB-lineは、肺うっ血をベッドサイドで評価できる所見として有用です。

肺エコーは、心エコーや腹部エコーに比べると、未経験者でも比較的習得しやすいと言われています。
POCUSとしての活用も広がっており、今後さらに注目される分野だと感じました。

やはり一般演題は楽しい|現場の工夫に学びがある

今回、改めて感じたのは、
一般演題の面白さ です。

オンデマンド配信がない影響もあったのか、会場の規模の影響もあったのか、どのセッションも人が多く、立ち見が出ている場面もありました。

特にEcho Technologyは日常検査に直結する内容が多く、とても興味深く聞くことができました。

ガイドラインやシンポジウムはもちろん重要です。
しかし一般演題には、稀な症例や現場で実際に困ったこと、工夫したこと、検証したことが詰まっています。

「この視点、自分の施設でも使えるかもしれない」
「この方法なら明日から意識できそう」

そう思える発表が多いのが、一般演題の魅力だと思います。

まとめ

JSE2026に参加して、特に印象に残ったのは以下の点です。

  • 2025年版の左室拡張能評価アルゴリズムは、判定不能例を減らす一方でHFpEFの偽陰性に注意が必要
  • VMTスコアは専用ソフトがなくても使える補助指標として興味深い
  • AIは心エコーの自動計測、読影、レポート作成に大きく関わってくる可能性がある
  • VExUSや肺エコーなど、臓器うっ血を評価する流れが広がっている
  • 一般演題には、現場で明日から使えるヒントが多い

今回の学会は、単に新しい知識を得るだけでなく、
「これからの心エコー検査者に何が求められるのか」
を考えるきっかけになりました。

AIや新しい指標が増えても、最終的に大切なのは、画像を見て、患者背景を考え、必要な情報を臨床につなげる力だと思います。

やはり現地参加の良さは、演者の熱量や会場の反応を直接感じられることですね。

今後オンデマンド配信もされるので、興味のある方は是非!

参考文献:
Simple Two-Dimensional Echocardiographic Scoring System for the Estimation of Left Ventricular Filling Pressure
Visual echocardiographic scoring system of the left ventricular filling pressure and outcomes of heart failure with preserved ejection fraction
VExUS Point-of-Care Ultrasound Tool to Detect Changes in Volume Status: A Prospective Observational Study
Decoding VExUS: a practical guide for excelling in point-of-care ultrasound assessment of venous congestion

おのこ

サイト運営者:おのこ

本サイトにお越しいただき、ありがとうございます。
私は関東在住の臨床検査技師です。
超音波検査で全身スキャン出来るようになりたい!という気持ちから
・超音波検査士(消化器・表在・循環器・泌尿器・けんしん)
・血管診療技師
・JHRS認定心電図専門士
・乳がん検診精度管理中央機構認定技師
を取得しました。
このブログでは、超音波検査の症例や参加した学会・勉強会の感想、超音波検査士認定試験について書いています。
これから超音波検査の業務に携わる方、超音波検査士を受験される方のお役に立てれば幸いです。

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