【超音波検査士基礎】アーチファクトについて小話2025

超音波検査士認定試験

お疲れ様です。

超音波検査士認定試験でアーチファクトも必ず出題されていた記憶があります。

過去参加させていただいた学術集会や講習会、教育セッションで感じたことは「まだ解明されていないアーチファクトはあるんだなあ」ということです。過去の資料を見ても先生方の仰っている内容が微妙に違っていたり…ニュアンスの違い・受け取り側の理解の違いかもしれませんが。

だから日超医さんが公開されているUlPath eラーニング基礎編のアーチファクトがまだ公開されていないのかしら?なんて。思い過ごしでしょうけど。今後公開されて内容に少しでも相違があれば速攻に直します(笑)

今回はアーチファクトについて疑問に感じたことや私なりの解釈を書かせていただきます。

試験に出るかは微妙な内容もあるので(超音波検査士研修ガイドライン第3版改訂版に記載されていないので)暇つぶしとしてご覧ください。

音響陰影は減衰?反射?

如月会【超音波検査士認定試験対策】の模擬試験問題では、

『結石の下方で起こる音響陰影は周波数依存減衰による』という問いに対し『×:音響陰影は固有音響インピーダンスの差が大きいことにより反射が強くなり後方に音波が伝わらないことによっておこる』という解説がされています。

しかしながら、音響陰影の要因として『減衰』を挙げている講習会もあったり。【超音波専門医認定試験問題集第7版】ではアーチファクトと関連する事柄の組み合わせで適切なものとして『音響陰影-減衰』と記載されています。

音響陰影は反射によるものなの?減衰なの?という疑問。これに対して2023年に参加した『超音波基礎セミナー(富士フィルムヘルスケア株式会社主催)』に答えがありました。

セミナー内のスライドに、

  • 腫瘍等:減衰が多い場合
  • 骨等:反射率が大きい場合(音響インピーダンス大)

この2点を音響陰影と説明されていました。

また、日本超音波医学会第37回関東甲信越地方会学術集会講習会内(2025年)で音響陰影について工学実験の結果を説明されていた際『(グリセリンの)減衰係数は大きく無エコーになる』ということもおっしゃっていました。

以上をふまえると、

  • 『結石or骨』なら『反射』で『音響陰影』が起こると考えて
  • 以外の『腫瘍』とかなら『減衰』で『音響陰影』が発生する

と覚えた方がいいのかなと考えたり。出題はされなさそうですが…

後方エコー増強の機序って?

日超医の医用超音波用語集では『腫瘤などの後方にみられるエコーが増強していること』と記載されていて、機序などは書かれていません。問題集などには

周囲よりも減衰が少ない組織の後方にエコーレベルが上昇する現象

と記載されていることが多く、私もそう覚えていました。

ですが、日本超音波医学会第97回学術集会内で『後方エコー増強はTGC(Time-gain compensation)がだまされているせいで発生する。減衰の違いによるアーチファクト』という説明をされていました。

先生がおっしゃるには、

  • 正常肝でも減衰は必ず起こっている→深部は本来減弱している
  • TGCが正常肝では均一に描出されるよう補正されている
  • (のう胞など減衰が起こらない媒質が存在した場合、そのエコー下は)TGCが過大に補正し出現するのが後方エコー増強

だそうです。減衰は合っているけどTGCも絡んでるのね!という新たな発見です。

B-lineがアツいの?

超音波基礎で最近よく見かけるなーと思っていたら、Bライン間のせん断波速度を計測することで肺の弾性を調べる<Bラインエラストグラフィ>という開発が進んでいると講習会内で仰っていました。

B-lineは肺エコー特有のアーチファクトで、

  1. 肺の炎症が進行すると肺胞内に液体貯留が生じる。
  2. 空気と水といった音響インピーダンス差の大きい界面では内部で多重反射が起こり、アーチファクトが縦方向にのびて画像化される。

という機序のようです。いや…すごい!

こちらのアーチファクト、なんか見覚えある…と思っていたのですが、

Ring-down artifact ≒ B-lineだそうですね。

因みにRing-down artifactは消化管でみられるアーチファクトです。

先生は「今ホットなB-line」と仰っていましたが…うーん出題あるかなあ…

ガイドラインには記載されていないから…どうでしょうね。

まとめ

教育セッション内で長沼先生が、

「超音波には分かっていそうで実は分かっていないことが多い。逆に言えばそれがアーチファクトを勉強する面白さ」と仰っていました。

超音波への愛を感じる素敵な表現ですよね。私も先生方の探求心や情熱を見習って日々勉強しようと思います。

今回の内容がへえ!程度の参考になれば幸いです。

引用元:

  • 日本超音波医学会第20回教育セッション:超音波の基礎とアーチファクト(2021)
  • 日本超音波医学会第21回教育セッション:Bモード画像の基礎(2022)
  • 日本超音波医学会第22回教育セッション:Bモードの基礎(2023)
  • 日本超音波医学会第23回教育セッション:(基礎)超音波専門医・検査士のための基礎(2024)
  • 日本超音波医学会第97回学術集会 パネルディスカッション消化器5消化器領域における超音波検査のアーチファクト~その代書と活用法を考える~(2024)
  • 日本超音波医学会第37回関東甲信越地方会学術集会講習会:超音波アーチファクトの工学的検討(2025)

おのこ

サイト運営者:おのこ

本サイトにお越しいただき、ありがとうございます。
私は関東在住の臨床検査技師です。
超音波検査で全身スキャン出来るようになりたい!という気持ちから
・超音波検査士(消化器・表在・循環器・泌尿器・けんしん)
・血管診療技師
・JHRS認定心電図専門士
・乳がん検診精度管理中央機構認定技師
を取得しました。
このブログでは、超音波検査の症例や参加した学会・勉強会の感想、超音波検査士認定試験について書いています。
これから超音波検査の業務に携わる方、超音波検査士を受験される方のお役に立てれば幸いです。

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