お疲れ様です。
先々週から急に寒くなりましたよね。先日朝、関東の気温はひとケタでした。秋どこへ行った・・・
周りではゴホゴホと咳をしている方がちらほら。受験を控えている方々は少々神経質になってしまうのではないでしょうか。体調管理には気を付けてお過ごしください。
今回は超音波基礎問題対策について、その中でも私が過去に3回基礎を受験した際「よく見るなぁ」と思った【減衰】について書かせていただきます。
減衰とは?超音波のエネルギーが失われる現象
減衰(attenuation)とは、超音波が体内を伝搬していく過程でエネルギーが失われてしまう(=生体内で温度が上がる熱的作用)現象のことです 。
主な原因としては、以下のものが挙げられます 。
- 吸収
- 散乱
- 拡散
これらの現象により、超音波プローブから出たエネルギーは距離が離れるにつれてどんどん弱くなってしまうのです 。
- 生体では吸収・散乱減衰が主です
- 散乱減衰・吸収減衰は平面波で起こります
- 拡散減衰は球面波で起こります
- 音波は常に減衰しながら伝搬しています(水を伝搬している場合は減衰がほぼゼロ)
周波数依存減衰について
減衰には、周波数が高いほど減衰が大きい、という特性があり、これを「周波数依存減衰」と呼びます 。
この関係は、波の性質から理解できます。
- 周波数が高いということは、超音波の振動回数が大きいということです 。
- 振動回数が多いと、媒質を伝わる過程で、物質との相互作用(摩擦や変形など)の機会が増えます 。
- その結果、エネルギーが熱などに変換されて失われやすくなってしまいます 。
つまり、高周波の超音波は浅いところの分解能は優れていますが、減衰が大きいため深部には届きにくい、というトレードオフの関係があるのです。
減衰量を求める計算は以下になります。
減衰量(dB)=減衰(吸収)係数(dB/cm・MHz)×周波数(MHz)×距離(cm)
この減衰係数の単位が減衰の性質を表していて、減衰量は周波数と距離に依存します。
おまけ:ちょっと小ネタ的な話
今回色々な資料を見比べて、んん?と思った事も書かせていただきます。
- 横波の減衰係数は、縦波より大きい(超音波専門医認定試験問題集 第7版より)
- 減衰係数の概略値は正常組織で0.5dB/(cm MHz)(日本超音波医学会教育委員会主催 第24回教育セッション)
1.に関してはすいません初耳でした。理由を調べてみたのですがはっきりせず、AIに聞いてみたら「主に媒質の粘性によるもの」との返答。横波はせん断応力に対する内部摩擦(粘性)が強く働くため、縦波よりも速く減衰するそうです。わかるようなわからないような…
2.に関しては、【超音波検査士認定試験対策:基礎編: 過去問分析~出題のポイントで学ぶ!】内では『生体軟部組織での減衰係数はおよそ1dB/cm・MHz程度である』と記載されていますし、自分もその記憶だったのでちょっとびっくりしました。同会の他教育セッション内では『0.5dB/cm/MHzは肝臓のほぼ正常な値と言われている』と説明されていたので間違いではなさそうです。
まとめ
「減衰」は、超音波検査の画像品質(深達度と分解能)を決定する根幹の要素です。この原理を理解しておくことで、なぜこのプローブ周波数を選んだのか、なぜ深いところは描出が難しいのか、という疑問に自信を持って答えられるようになります。
これからも、超音波検査士受験経験者として皆さんの学習を応援しています!今回の記事が、皆さんの超音波検査基礎の理解を深める一助となれば幸いです。
引用元
- 日本超音波医学会第24回教育セッション(2025年)
- 日本超音波医学会 第36・37回関東甲信越地方会学術集会 講習会(2024・2025年)
- 超音波検査士認定試験対策:基礎編: 過去問分析~出題のポイントで学ぶ!(東京超音波研究会 如月会 編著)
- 超音波専門医認定試験問題集 第7版

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