お疲れ様です。
今回は、超音波検査士の基礎で押さえておきたい「パルス幅・周波数・軸方向分解能」の関係について書かせていただきます。
軸方向分解能について勉強すると、参考書には次のように書かれていることが多いと思います。
- パルス幅が短いほど、軸方向分解能は良い
- 周波数が高いほど、軸方向分解能は良い
ここだけを覚えることもできますが、私は最初、「パルス幅と周波数は、どうつながっているのだろう?」と疑問に思いました。
さらに、時間を表す「パルス幅」と、距離を表す「空間パルス長」が同じように扱われるため、言葉だけを追っていると関係が見えにくくなります。
この記事では、
周波数が高くなる → 波長が短くなる → 空間パルス長が短くなる → 軸方向分解能が良くなる
という流れを、ひとつずつ整理していきたいと思います。
つらつらと書かせていただいているので、要点のみ覚えたい方は「試験対策で押さえるポイント」からご覧ください。
※本記事中の確認問題は、過去問を再現したものではなく、学習用に作成したオリジナル問題です。
軸方向分解能とは?
軸方向分解能とは、超音波ビームの進行方向に並んだ2つの反射体を、別々のものとして識別する能力です。
「距離分解能」「深さ方向の分解能」と表現されることもあります。
たとえば、超音波ビームの進行方向に小さな反射体が2つ並んでいたとします。
2つの反射体から返ってくるエコーが時間的に分かれていれば、装置は2つの反射体として表示できます。しかし、エコーが重なってしまうと、1つの反射体のように表示されます。
つまり、軸方向分解能を考えるときに重要なのは、ビームの細さではなく、送り出される超音波パルスの短さです。
軸方向分解能:ビームの進行方向に並ぶ2点を見分ける能力
方位方向分解能:ビームと直交する方向に並ぶ2点を見分ける能力
方位方向分解能にはビーム幅やFナンバーが関係します。一方、軸方向分解能には空間パルス長が関係します。
ここは試験でも混同しやすいポイントです。
まず「パルス」とは何か
超音波診断装置は、超音波を連続して出し続けているわけではありません。
短い超音波を送信したあと、体内から反射波が戻ってくるのを待ちます。この「短く区切って送信される超音波」がパルスです。
1つのパルスの中には、通常、複数周期の波が含まれています。
たとえば、1つのパルスが2周期分の波で構成されていれば、パルス内の波数は2です。
この「何周期分の波がひとまとまりになっているか」が、後ほど説明する空間パルス長に関係します。
パルス幅と空間パルス長の違い
ここが、この記事で最も整理しておきたい部分です。
パルス幅は「時間」
パルス幅は、1つのパルスが持続している時間です。「パルス持続時間(pulse duration)」とも呼ばれ、単位は秒です。
パルス内の波数を (n)、周波数を (f) とすると、パルス幅は次の式で表せます。
[ パルス幅 = n ÷ f ]
周波数は1秒間の振動回数なので、同じ波数であれば、周波数が高いほど1周期にかかる時間が短くなり、パルス幅も短くなります。
空間パルス長は「距離」
空間パルス長(spatial pulse length:SPL)は、1つのパルスが空間の中で占める長さです。単位はmmなどの距離で表します。
パルス内の波数を (n)、波長を (λ) とすると、
[ 空間パルス長 = n × λ ]
となります。
また、音速を (c)、パルス幅を (τ) とすると、
[ 空間パルス長 = c × τ ]
とも表せます。
整理すると、
| 用語 | 表しているもの | 単位 | 式 |
|---|---|---|---|
| パルス幅(パルス持続時間) | パルスが続く時間 | s、μs | (n/f) |
| 空間パルス長 | パルスが空間で占める長さ | mm、m | (n × λ) |
となります。
パルス幅と空間パルス長は別の量ですが、音速が一定なら、パルス幅が短くなるほど空間パルス長も短くなります。
参考書によっては「パルス幅が短いほど軸方向分解能が良い」と説明されています。これは、より正確には「パルス幅が短くなると空間パルス長が短くなるため、軸方向分解能が良くなる」と考えると理解しやすいと思います。
軸方向分解能は空間パルス長の1/2
軸方向分解能は、次の式で表されます。
[ 軸方向分解能 = 空間パルス長 ÷ 2 ]
さらに空間パルス長を展開すると、
[ 軸方向分解能 = n × λ ÷ 2 ]
波長は、音速を周波数で割って求めるため、
[ 波長 λ = c ÷ f ]
より、
[ 軸方向分解能 = n × λ ÷ 2 ]
となります。
なぜ「1/2」なのか?
超音波は、送信されて反射体まで進み、反射したあと探触子まで戻ってきます。
2つの反射体が深さ方向に (d) だけ離れている場合、2つの反射波の伝搬距離には往復で (2d) の差が生じます。
この往復距離の差が空間パルス長以上になれば、2つの反射波を時間的に分けて受信できます。
したがって、
[ 2d ≧ 空間パルス長 ]
となり、識別できる最小距離 (d) は、
[ d= 空間パルス長 ÷ 2 ]
となります。
単に「公式だから2で割る」のではなく、「超音波が往復しているため」と考えると覚えやすいと思います。
周波数を高くすると、なぜ軸方向分解能が良くなる?
同じ媒質の中では音速はほぼ一定です。
[ 波長 λ = c ÷ f ]
ですから、周波数を高くすると波長は短くなります。
パルス内の波数が同じであれば、
周波数が高くなる
→ 波長が短くなる
→ 空間パルス長が短くなる
→ 軸方向分解能が良くなる
という関係になります。
ただし、「周波数を高くすれば、いつでも良い画像になる」という意味ではありません。
高周波になるほど生体内での減衰が大きくなるため、深部まで届きにくくなります。
- 高周波:軸方向分解能は良いが、深達度は低下する
- 低周波:深部まで届きやすいが、軸方向分解能は低下する
したがって、臨床では観察したい臓器に届く範囲で、できるだけ高い周波数を選択することになります。
表在臓器にリニアプローブ、腹部深部にコンベックスプローブを使用する理由のひとつも、この分解能と深達度の関係です。
パルス内の波数を減らしても軸方向分解能は良くなる
空間パルス長は、
[ 空間パルス長=パルス内の波数 × 波長 ]
です。
したがって、波長が同じでも、パルス内の波数を減らせば空間パルス長は短くなり、軸方向分解能は良くなります。
探触子の振動は、電気信号を止めた瞬間に完全に止まるわけではありません。振動が長く続くと、1つのパルスに含まれる波数が増え、空間パルス長が長くなります。
そこで、探触子の背面にあるバッキング材(制動材)によって振動を早く減衰させます。
制動を強くすると、
振動が早く止まる
→ パルス内の波数が減る
→ 空間パルス長が短くなる
→ 軸方向分解能が良くなる
という関係になります。
一方で、制動を強くしすぎると送信される超音波のエネルギーや感度に影響します。ここにも、分解能と感度のトレードオフがあります。
周波数を変えれば軸方向分解能も自由に変えられる?
最近の探触子は広い周波数帯域を持ち、装置上で送信周波数を選択できるものが一般的です。
そのため、周波数を高く設定すれば、一般には波長が短くなり、軸方向分解能の改善が期待できます。
ただし、実際の軸方向分解能は、表示されている周波数だけで決まるわけではありません。
- パルス内の波数
- 探触子の帯域幅
- 送信波形
- 受信信号の処理
- 深部での高周波成分の減衰
なども関係します。
したがって試験対策では、「他の条件が同じなら、高周波ほど軸方向分解能が良い」と押さえておくのが安全です。
軸方向分解能と深度の関係
軸方向分解能は、基本的には空間パルス長によって決まります。そのため、ビーム幅が深度によって変化する方位方向分解能とは異なり、理論上は深度による変化が比較的小さい分解能です。
ただし実際の生体内では、深部へ進むほど高周波成分が減衰し、受信信号の周波数成分や波形も変化します。このため、実際の画像で得られる軸方向分解能が、すべての深度で完全に同じというわけではありません。
試験ではまず、
軸方向分解能は空間パルス長で決まる
方位方向分解能はビーム幅で決まる
という基本を優先して整理しておきましょう。
Fナンバーと軸方向分解能を混同しない
以前の記事では、Fナンバーとビーム幅の関係を整理しました。
Fナンバーは、焦点距離を開口幅で割った値です。Fナンバーが小さくなると焦点付近のビームは細くなり、方位方向分解能が良くなります。
一方、軸方向分解能を決める基本的な因子は空間パルス長です。
| 分解能 | 2点が並ぶ方向 | 主に関係する因子 |
|---|---|---|
| 軸方向分解能 | 超音波ビームと平行 | 空間パルス長、パルス幅、周波数、波数 |
| 方位方向分解能 | 超音波ビームと直交 | ビーム幅、開口幅、焦点、Fナンバー |
試験で「軸方向分解能を改善するもの」を問われたとき、開口幅やフォーカスを選ばないよう注意が必要です。
試験対策で押さえるポイント
軸方向分解能については、次の流れを説明できるようにしておきましょう。
- パルス幅が短いほど、空間パルス長は短くなる
- 空間パルス長が短いほど、軸方向分解能は良い
- 周波数が高いほど、波長は短くなる
- パルス内の波数が少ないほど、空間パルス長は短くなる
- 制動を強くすると振動が早く止まり、パルス内の波数は少なくなる
- 高周波では分解能が良くなる一方、減衰が増えて深達度が低下する
- 軸方向分解能は空間パルス長、方位方向分解能はビーム幅で考える
試験で迷ったときの考え方
「軸方向分解能が良くなる条件はどれか」と聞かれたら、まず空間パルス長が短くなるかどうかを考えます。
高周波
→ 波長が短い
→ 空間パルス長が短い
→ 軸方向分解能が良い
波数が少ない
→ 空間パルス長が短い
→ 軸方向分解能が良い
この2本の流れを押さえておけば、多くの選択肢を整理できます。
なお、PRFや走査線数はフレームレートに関係しますが、軸方向分解能を直接決める因子ではありません。
確認問題
以下は、過去問の転載・再現ではなく、本記事の内容を確認するためのオリジナル問題です。
問題1
軸方向分解能を改善する条件として、最も適切なのはどれでしょうか。
- 周波数を低くする
- パルス内の波数を増やす
- 空間パルス長を短くする
- 送信フォーカスの段数を増やす
- セクタ角度を狭くする
解答
3.空間パルス長を短くする
軸方向分解能は、空間パルス長の1/2で表されます。空間パルス長が短いほど、近接した2つの反射体からのエコーを時間的に分けやすくなります。
送信フォーカスは主に方位方向分解能、セクタ角度は主に走査線数やフレームレートに関係します。
問題2
生体内の音速を1540 m/s、送信周波数を5 MHz、1つのパルスに含まれる波数を2とします。このときの軸方向分解能を求めてください。
解答
まず、波長を求めます。
[ 波長 λ = 1540 ÷(5 × 10⁶)= 0.000308 m = 0.308 mm ]
空間パルス長は、
[ 空間パルス長 = 2 × 0.308 = 0.616 mm ]
軸方向分解能は空間パルス長の1/2なので、
[ 軸方向分解能 = 0.616 ÷ 2 = 0.308 mm ]
したがって、答えは 0.308 mm です。
問題3
次のうち、方位方向分解能には関係するものの、軸方向分解能を直接決める因子ではないものはどれでしょうか。
- 空間パルス長
- 波長
- パルス内の波数
- ビーム幅
- パルス持続時間
解答
4.ビーム幅
ビーム幅は、ビームと直交する方向に並んだ2点を識別する方位方向分解能に関係します。
軸方向分解能は、空間パルス長によって決まります。波長・パルス内の波数・パルス持続時間は、いずれも空間パルス長と関係します。
まとめ
今回は、パルス幅・周波数・軸方向分解能の関係を整理しました。
- パルス幅は、パルスが持続する時間
- 空間パルス長は、パルスが空間で占める長さ
- 空間パルス長は「パルス内の波数×波長」
- 軸方向分解能は「空間パルス長÷2」
- 高周波になると波長が短くなり、軸方向分解能は良くなる
- パルス内の波数が少なくても、軸方向分解能は良くなる
- 高周波では減衰が増えるため、分解能と深達度のバランスが必要
- Fナンバーやビーム幅は、主に方位方向分解能に関係する
「高周波ほど軸方向分解能が良い」とだけ覚えるのではなく、
周波数 → 波長 → 空間パルス長 → 軸方向分解能
という順番で考えると、選択肢の表現が変わっても判断しやすくなります。
超音波の基礎は、用語が多く難しく感じますが、それぞれを式でつなぐと意外とシンプルです。一緒に少しずつ整理していきましょう。
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参考文献
- Ng A, Swanevelder J. Resolution in ultrasound imaging. Continuing Education in Anaesthesia Critical Care & Pain. 2011;11(5):186–192. https://www.bjaed.org/article/S1743-1816(17)30390-2/fulltext
- Lieu D, et al. Ultrasound fundamentals and their clinical implications for interventional cytopathologists. 2024. https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC11087623/

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