超音波の基礎を勉強していると出てくる「Fナンバー」。
Fナンバーの式は、
Fナンバー = 焦点距離 ÷ 開口幅
と、とてもシンプルです。
しかし、
- なぜ開口幅がビーム幅に関係するの?
- なぜFナンバーが小さいと方位分解能が良くなるの?
と考えると、意外と分かりにくいところではないでしょうか。
Fナンバーは式だけを暗記するよりも、
「焦点までの距離に対して、どのくらい広い開口を使ってビームを形成しているか」
と考えると理解しやすくなります。
今回は、Fナンバーと開口幅、焦点、ビーム幅、方位分解能との関係について整理します。
後半では、試験を意識したオリジナル問題も用意しました。
Fナンバーとは?
Fナンバーは、
Fナンバー = 焦点距離 ÷ 開口幅
で表されます。
例えば、
- 焦点距離:40 mm
- 開口幅:20 mm
なら、
40 ÷ 20 = 2
となり、Fナンバーは2です。
ここで重要なのが「開口幅」です。
開口幅=プローブの大きさではない
アレイ型プローブには、多数の振動子(素子)が並んでいます。
しかし、超音波を送受信するときに、必ずしもプローブに並んだすべての振動子を同時に使用しているわけではありません。
ビーム形成に実際に使用している振動子群の幅を、有効開口(active aperture)と考えます。
つまり、Fナンバーに用いられる開口幅は、
「単純なプローブ全体の幅ではなく、そのビーム形成に使用している有効開口の幅」
です。
例えば、プローブに多くの振動子が並んでいても、そのうち一部の振動子を使ってビームを形成していれば、その使用している振動子群の幅が開口になります。
実際に使用する素子数や送受信開口の制御方法は、装置やプローブ、ビームフォーミング方式によって異なります。
なぜ開口幅がビーム幅に関係するの?
ここがFナンバーを理解するうえで重要なポイントです。
アレイプローブでは、複数の振動子から出た超音波が互いに重なり合いながらビームを形成します。
それぞれの振動子から出た波は、
- 同じ位相で重なるところでは強め合う
- 位相がずれて重なるところでは弱め合う
という性質があります。
つまり、超音波ビームは波の干渉によって形作られています。
焦点を作る場合には、複数の振動子から出た超音波が目的の焦点に同じタイミングで到達するよう、振動子ごとに送信するタイミングを少しずつ変えます。
その結果、焦点では波が強め合い、超音波ビームが集束します。
開口が広いとビームを細く絞りやすい
開口が広いということは、ビーム形成に参加している振動子群の幅が広いということです。
広い範囲から同じ焦点へ超音波を集めるため、より鋭く集束させることができます。
また、焦点から少し横に外れた位置では、それぞれの振動子から届く距離の差が大きくなり、位相もずれやすくなります。
そのため、焦点以外では波が打ち消し合いやすくなり、中央付近に細いビームを形成しやすくなります。
開口幅が広い
↓
ビームを細く絞りやすい
開口幅と回折も関係している
開口幅とビームの関係は、以前の記事で取り上げた「回折」ともつながっています。
超音波は有限の開口から出るため、進むにつれて広がります。
その広がり方は概念的に、
ビームの広がり角 ∝ 波長 ÷ 開口幅
と考えることができます。
つまり、
開口幅が大きい
↓
ビームの広がりが小さい
反対に、
開口幅が小さい
↓
ビームが広がりやすい
という関係があります。
開口幅が超音波ビームの説明に何度も登場するのは、開口そのものがビームの形を決める重要な要素だからです。
関連記事:超音波の回折|「波長が長いほど回折しやすい」ってどういうこと?
Fナンバーが小さいとは、どんな状態?
焦点距離を40 mmで固定して比較してみます。
開口幅20 mmの場合
40 ÷ 20 = 2
Fナンバーは2です。
開口幅40 mmの場合
40 ÷ 40 = 1
Fナンバーは1です。
どちらも焦点までの距離は40 mmで同じです。
違うのは開口幅です。
Fナンバー1の方が、より広い開口から同じ焦点へ向かって超音波を集めています。
そのため、
開口幅が広くなる
↓
Fナンバーが小さくなる
↓
集束が強くなる
↓
焦点部のビーム幅が細くなる
という関係になります。
Fナンバーとビーム幅の関係
集束した超音波では、焦点付近のビーム幅は概念的に、
ビーム幅 ∝ 波長 × Fナンバー
という関係があります。
つまり、波長が同じなら、
Fナンバーが小さい
↓
焦点部のビーム幅が細い
となります。
ここまで分かると、方位分解能との関係も見えてきます。
Fナンバーが小さいと方位分解能が良くなる
方位分解能とは、
「超音波ビームの進行方向に対して横方向に並んだ2つの構造物を、別々のものとして識別する能力」
です。
ビームが太いと、横に並んだ2つの構造物が同じビームの中に入りやすくなります。
すると、2つの構造物を別々のものとして識別しにくくなります。
一方、ビームが細ければ、それぞれを分けて捉えやすくなります。
したがって、
Fナンバーが小さい
↓
焦点部のビーム幅が細くなる
↓
方位分解能が良くなる
という関係になります。
試験対策としては、
Fナンバー↓ → ビーム幅↓ → 方位分解能↑
をまず押さえておきましょう。
焦点を深くするとFナンバーはどうなる?
今度は開口幅を20 mmで固定してみます。
焦点距離40 mm
40 ÷ 20 = 2
Fナンバーは2です。
焦点距離80 mm
80 ÷ 20 = 4
Fナンバーは4です。
開口幅を変えずに焦点だけ深くすると、Fナンバーは大きくなります。
焦点距離が深くなる
↓
Fナンバーが大きくなる
↓
焦点部のビーム幅が太くなる
という方向に変化します。
深くなると開口幅を広げるのはなぜ?
では、深いところでは方位分解能がどんどん悪くなってしまうのでしょうか。
ここで重要になるのが「開口幅の調整」です。
例えば、深さ40 mmで開口幅20 mmなら、
40 ÷ 20 = 2
Fナンバーは2です。
では、深さ80 mmでもFナンバーを2にしたい場合を考えてみます。
80 ÷ 40 = 2
つまり、開口幅を40 mmに広げれば、深くなってもFナンバーを2に保つことができます。
深さが増える
↓
開口幅も広げる
↓
Fナンバーを一定に保つ
という考え方です。
Dynamic aperture(動的開口)とは?
アレイ型プローブでは、深さに応じてビーム形成に使用する振動子数を変えることができます。
特に受信時には、浅いところでは比較的小さな開口を使用し、深くなるにつれて受信に使用する振動子数を増やして開口を広げる制御が行われます。
これをdynamic aperture(動的開口)と呼びます。
目的のひとつは、深さが変わってもFナンバーを適切に保ち、ビーム幅や方位分解能が大きく変化しないようにすることです。
つまり、
「浅部では開口を小さく、深部では開口を大きくする」
というのは、単に深いところでは多くの振動子を使うという意味ではありません。
深さに応じて有効開口を変え、超音波ビームの形をコントロールしていると考えると分かりやすくなります。
Fナンバーが小さければ小さいほどよい?
ここまで読むと、
「Fナンバーが小さいほどビームが細くなり、方位分解能も良くなるなら、小さいほどいいのでは?」
と思うかもしれません。
しかし、Fナンバーを小さくすると集束は強くなる一方で、細いビームを保てる深さ方向の範囲は短くなります。
Fナンバーが小さい場合
- 集束が強い
- 焦点部のビームが細い
- 方位分解能が良い
- 焦点深度は短くなる
Fナンバーが大きい場合
- 集束が弱い
- 焦点部のビームは太くなる
- 方位分解能は低下する
- 焦点深度は長くなる
ここでいう「焦点深度」は、プローブから焦点までの距離である「焦点距離」とは異なります。
焦点深度とは、
「良好な集束状態が保たれる深さ方向の範囲」
と考えると分かりやすいと思います。
ここまでを整理
Fナンバーは、
Fナンバー = 焦点距離 ÷ 開口幅
です。
開口幅を広げると、
開口幅↑
↓
Fナンバー↓
↓
焦点部ビーム幅↓
↓
方位分解能↑
となります。
一方、開口幅を一定にしたまま焦点距離を深くすると、
焦点距離↑
↓
Fナンバー↑
↓
焦点部ビーム幅↑
となります。
そのため、実際のビーム形成では深さに応じて有効開口を変化させることがあります。
試験ではどう聞かれる?Fナンバーの確認問題
ここからは、Fナンバーの理解を確認してみましょう。
※以下は実際の試験問題や過去問題を再現したものではありません。Fナンバーの理解を確認するために作成したオリジナル問題です。
問題1:Fナンバーを計算する
焦点距離40 mm、開口幅20 mmの場合、Fナンバーはいくつでしょうか。
- 0.5
- 2
- 20
- 60
答え:②
Fナンバー = 焦点距離 ÷ 開口幅なので、
40 ÷ 20 = 2
となります。
問題2:開口幅を広くすると?
焦点距離を一定としたまま開口幅を広くすると、Fナンバーはどうなるでしょうか。
- 大きくなる
- 小さくなる
- 変化しない
- 周波数によって決まる
答え:②
Fナンバー = 焦点距離 ÷ 開口幅なので、分母である開口幅が大きくなるほどFナンバーは小さくなります。
問題3:Fナンバーを小さくすると?
Fナンバーを小さくした場合、焦点部のビーム幅はどうなるでしょうか。
- 太くなる
- 細くなる
- 変化しない
- 焦点がなくなる
答え:②
Fナンバーが小さくなると、焦点部のビーム幅は細くなります。
Fナンバー↓ → ビーム幅↓ → 方位分解能↑
までつなげて覚えておきましょう。
問題4:方位分解能が最も良いのは?
その他の条件が同じ場合、焦点部の方位分解能が最も良好なのはどれでしょうか。
- Fナンバー1
- Fナンバー2
- Fナンバー3
- Fナンバー4
答え:①
Fナンバーが小さいほど焦点部のビーム幅は細くなります。
したがって、この条件ではFナンバー1が最も良好な方位分解能となります。
問題5:焦点を深くすると?
開口幅を一定にしたまま、焦点距離を深くするとFナンバーはどうなるでしょうか。
- 小さくなる
- 大きくなる
- 変化しない
- 必ず1になる
答え:②
Fナンバー = 焦点距離 ÷ 開口幅なので、開口幅が一定であれば、焦点距離が深くなるほどFナンバーは大きくなります。
問題6:Fナンバーを一定に保つには?
焦点距離40 mm、開口幅20 mmではFナンバーは2です。
焦点距離80 mmでもFナンバーを2に保ちたい場合、必要な開口幅はいくつでしょうか。
- 10 mm
- 20 mm
- 40 mm
- 80 mm
答え:③
Fナンバーを2にしたいので、
80 ÷ 開口幅 = 2
となります。
したがって、
開口幅 = 40 mm
です。
深くなるほど開口幅を広げることで、同じFナンバーを保つことができます。
Fナンバーが参考書であまり詳しく扱われないのはなぜ?
ここからは超個人的な見解になりますが、Fナンバーについて参考書などで詳しく説明される機会が少ない理由のひとつに、電子フォーカスやオートフォーカスなど、装置側でビーム形成を調整する技術が発達したことがあるのではないかと考えています。
現在の超音波装置では、検者がFナンバーを直接計算したり設定したりしなくても、深さや焦点位置に応じて装置側で開口やフォーカスが調整されます。
そのため、以前と比べるとFナンバーそのものを知識として深く学ぶ必要性は小さくなっているのかもしれません。
一方で、Fナンバーを理解することには意味があります。
Fナンバーを知ることで、
- なぜ焦点付近でビームが細くなるのか
- なぜ開口幅が方位分解能に関係するのか
- なぜ深さに応じて使用する開口が変化するのか
といった、焦点を形成する原理や超音波ビームの性質を理解しやすくなります。
また、Fナンバーそのものを計算する問題だけでなく、
「開口幅を広くするとビーム幅はどうなるか」
「Fナンバーが小さくなると方位分解能はどう変化するか」
といった文章問題の一部として問われる可能性もあります。
現在は装置が自動的に行ってくれる部分が増えていますが、だからこそFナンバーは、「操作するために覚える数字」というよりも、「焦点やビーム形成の仕組みを理解するために知っておきたい数字」と考えるとよいのではないでしょうか。
まとめ
Fナンバーは、
Fナンバー = 焦点距離 ÷ 開口幅
で表されます。
ここでいう開口幅はプローブそのものの大きさではなく、
「ビーム形成に実際に使用している有効開口の幅」
です。
開口幅は、超音波ビームの回折や干渉、集束に大きく関係します。
そのため、
開口幅↑
↓
Fナンバー↓
↓
焦点部ビーム幅↓
↓
方位分解能↑
という関係になります。
Fナンバーだけを単独で覚えるのではなく、
開口幅 → ビーム形成 → Fナンバー → ビーム幅 → 方位分解能
まで一続きで考えると理解しやすくなります。
「Fナンバーが小さいほど方位分解能が良い」と丸暗記するのではなく、
「広い開口から同じ焦点に集めるほど、ビームを細く絞ることができる」
というイメージを持っておくと、試験問題にも対応しやすくなると思います。

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