お疲れ様です。
パルスドプラ法やカラードプラ法を勉強すると、必ずといってよいほど出てくるのが「エイリアシング(折り返し現象)」です。
エイリアシングについて、
- 流速が速いと起こる
- スケールを上げれば改善する
- 連続波ドプラでは起こらない
と覚えている方も多いと思います。
しかし、試験では「深度を深くするとどうなるか」「周波数を下げるとどうなるか」「ベースラインを移動するとナイキスト限界は変わるか」など、自分の覚えている以外の角度から問われることがあります。
そこで今回は、エイリアシングが起こる仕組みを、PRF・ナイキスト限界・深度・送信周波数との関係から整理します。
※本記事の確認問題は、過去問の転載・再現ではなく、理解を確認するために作成したオリジナル問題です。
エイリアシングとは?
エイリアシングとは、パルスドプラ法で測定可能な上限を超えるドプラ偏移周波数が、反対側へ折り返して表示される現象です。装置が一定の間隔でドプラ信号を標本化する際に、測定可能な上限を超えたために生じます。
日本超音波医学会の医用超音波用語集では、血流速度がパルス繰返し周波数によって制限される周波数上限を超えた場合に、上限を超えた成分が反対側へ折り返して表示される現象と説明されています。
スペクトルドプラでは、波形の上端が画面の反対側へ回り込んだように表示されます。カラードプラでは、設定したカラースケールを超えた部分で色が反転して表示されます。
PRFとは?
PRF(pulse repetition frequency:パルス繰返し周波数)は、1秒間に超音波パルスを何回送信するかを表します。
たとえばPRFが5 kHzであれば、1秒間に5,000回パルスを送信していることになります。
PRFが高いほど短い間隔で血流を観測できるため、より高いドプラ偏移周波数を測定できます。一方、PRFが低いと測定できる周波数の上限も低くなり、エイリアシングが起こりやすくなります。
フレームレートの記事でも触れたように、超音波装置はパルスを送信したあと、反射波が戻ってくるのを待ってから次のパルスを送信します。
【内部リンク:フレームレートの記事】
https://onoko-blog.com/us_test_study_kiso_2025-9-7/
ナイキスト限界は「PRFの1/2」
パルスドプラ法で正しく検出できる最大のドプラ偏移周波数を、ナイキスト限界(ナイキスト周波数)といいます。
ナイキスト限界は、次の式で表されます。
ナイキスト限界 = PRF ÷ 2
たとえばPRFが6 kHzの場合、ナイキスト限界は3 kHzです。
このとき、3 kHzを超えるドプラ偏移周波数が入力されると、装置はその信号を正しく判別できず、反対側へ折り返して表示します。
試験で押さえたい関係
PRFが高い
→ ナイキスト限界が高い
→ 高いドプラ偏移周波数を測定できる
→ エイリアシングが起こりにくい
反対に、
PRFが低い
→ ナイキスト限界が低い
→ エイリアシングが起こりやすい
となります。
深度を深くするとエイリアシングが起こりやすい理由
深い場所からの反射波は、プローブへ戻るまでに時間がかかります。
装置は、送信したパルスの反射波が戻る前に次のパルスを送ると、どのパルスに対応する反射波なのかを区別しにくくなります。そのため、観察深度が深くなるほどパルスの送信間隔を長くする必要があります。
つまり、
測定深度が深くなる
→ 反射波が戻るまでの時間が長くなる
→ PRFを高く設定できない
→ ナイキスト限界が低くなる
→ エイリアシングが起こりやすい
という関係です。
パルスドプラのサンプルボリュームを必要以上に深い位置へ置かないことや、表示深度を調整することは、エイリアシングへの対処として有効です。
送信周波数を下げるとなぜ改善する?
ドプラ偏移周波数は、送信周波数、血流速度、入射角などに関係します。
基本的な関係は、次のとおりです。
ドプラ偏移周波数 = 2 × 送信周波数 × 血流速度 × cosθ ÷ 音速
同じ血流速度と入射角であれば、送信周波数が高いほどドプラ偏移周波数も高くなります。そのため、高い周波数を使用するとナイキスト限界を超えやすくなります。
反対に、送信周波数を下げるとドプラ偏移周波数が小さくなり、エイリアシングを軽減できます。
ただし、周波数を下げると分解能や低流速信号の検出などにも影響するため、単純に低ければよいというわけではありません。観察部位の深さや目的に合わせて調整します。
エイリアシングへの対処方法
エイリアシングが起こったときは、次の方法を検討します。
| 操作・条件 | エイリアシングへの影響 | 理由・注意点 |
|---|---|---|
| PRFまたはスケールを上げる | 起こりにくくなる | ナイキスト限界が高くなる |
| 測定深度を浅くする | 起こりにくくなる | PRFを高く設定しやすくなる |
| 送信周波数を下げる | 起こりにくくなる | ドプラ偏移周波数が小さくなる |
| ベースラインを移動する | 表示を調整できる | PRFとナイキスト限界自体は変わらない |
| 連続波ドプラへ変更する | エイリアシングは起こらない | 測定位置を限定できない |
まずはPRF・スケールを上げる
最も基本的な対処は、PRFまたは流速スケールを上げることです。
PRFが上がるとナイキスト限界も高くなるため、より高いドプラ偏移周波数まで測定できます。
ただし、PRFを上げすぎると低速血流の波形やカラー信号が表示されにくくなります。高速血流を見たいのか、低速血流を拾いたいのかによって調整が必要です。
測定深度を浅くする
表示深度を浅くしたり、サンプルボリュームを可能な範囲で浅い位置に設定したりすると、反射波の往復時間が短くなります。その結果、PRFを高く設定しやすくなります。
試験では、
深度を浅くする → PRFを上げられる → ナイキスト限界が上がる
という流れで考えると判断しやすくなります。
ベースラインを移動する
ベースラインを移動すると、一方向に使用できる表示範囲を広げられます。このため、一方向へ偏った血流波形では、画面上の折り返しを見やすい位置へ調整できます。
ただし、ベースラインを移動してもPRFは変わらないため、ナイキスト限界そのものが高くなるわけではありません。
ベースラインシフト = 表示範囲の配分を変える
PRFを上げる = 測定可能な上限を高くする
この違いは、試験で狙われやすいポイントです。
送信周波数を下げる
送信周波数を下げると、同じ流速でもドプラ偏移周波数が小さくなるため、折り返しを軽減できます。
「周波数を下げるとナイキスト限界が上がる」のではなく、測定対象となるドプラ偏移周波数が小さくなる、と考えるのがポイントです。
連続波ドプラではなぜエイリアシングが起こらない?
パルスドプラ法は、パルスを一定間隔で送受信して信号を標本化します。そのため、PRFによって測定できるドプラ偏移周波数の上限が決まります。
一方、連続波ドプラ法は超音波を連続的に送受信するため、パルスの繰返しに基づくナイキスト限界がなく、高速血流を測定しても原理上エイリアシングは起こりません。
ただし、連続波ドプラ法ではビーム上のどの深さから得られた信号なのかを限定できません。
| 方法 | 測定位置 | 高速血流 | エイリアシング |
|---|---|---|---|
| パルスドプラ法 | サンプルボリュームで限定できる | 上限がある | 起こる |
| 連続波ドプラ法 | 深さを限定できない | 測定しやすい | 原理上起こらない |
パルスドプラ法:距離分解能があるが、速度に上限がある
連続波ドプラ法:高速血流を測定できるが、距離分解能がない
と整理しておきましょう。
カラードプラで見える色の反転
カラードプラでも、測定するドプラ偏移周波数がナイキスト限界を超えると色が折り返して表示されます。
ただし、色が複雑に変化しているからといって、必ずしも乱流や病的な高速血流とは限りません。PRF、カラースケール、送信周波数、観察深度などの設定によってもエイリアシングは生じます。
臨床では、色の変化だけで判断せず、血管形態、狭窄部位、パルスドプラ波形などと合わせて評価することが重要です。
試験対策で押さえるポイント
- エイリアシングは、ドプラ偏移周波数がナイキスト限界を超えると起こる
- ナイキスト限界はPRFの1/2
- PRFを上げるとエイリアシングは起こりにくくなる
- 深度を深くすると設定できるPRFが低下し、エイリアシングが起こりやすくなる
- 送信周波数を下げるとドプラ偏移周波数が小さくなり、エイリアシングを軽減できる
- ベースラインを移動してもPRFとナイキスト限界自体は変わらない
- パルスドプラ法には測定速度の上限がある
- 連続波ドプラ法では原理上エイリアシングは起こらないが、測定深度を限定できない
【内部リンク:基礎問題の出題傾向を読み解く①】
https://onoko-blog.com/us_test_study_kiso_2025-8-24/
確認問題
問題1
パルスドプラ法のPRFが6 kHzであるとき、ナイキスト限界として正しいものはどれでしょうか。
- 1.5 kHz
- 3 kHz
- 6 kHz
- 9 kHz
- 12 kHz
解答
2.3 kHz
ナイキスト限界はPRFの1/2です。
6 kHz ÷ 2 = 3 kHz
したがって、3 kHzを超えるドプラ偏移周波数ではエイリアシングが起こる可能性があります。
問題2
ほかの条件が同じ場合、パルスドプラ法で測定深度を深くしたときに起こる変化として、最も適切なのはどれでしょうか。
- PRFを高く設定しやすくなる
- ナイキスト限界が高くなる
- エイリアシングが起こりにくくなる
- 反射波の往復時間が長くなる
- ドプラ偏移周波数が必ず低くなる
解答
4.反射波の往復時間が長くなる
深部では反射波が戻るまでに時間がかかるため、PRFを高く設定しにくくなります。その結果、ナイキスト限界が低下し、エイリアシングは起こりやすくなります。
問題3
エイリアシングが認められたときの操作について、正しいものはどれでしょうか。
- PRFを下げるとナイキスト限界が高くなる
- 測定深度を深くするとPRFを上げやすくなる
- ベースラインを移動するとPRF自体が上昇する
- 送信周波数を下げるとドプラ偏移周波数は小さくなる
- 連続波ドプラでも同じナイキスト限界による折り返しが起こる
解答
4.送信周波数を下げるとドプラ偏移周波数は小さくなる
ドプラ偏移周波数は送信周波数に比例します。そのため、送信周波数を下げると、同じ血流速度でもドプラ偏移周波数が小さくなり、エイリアシングを軽減できます。
ベースラインシフトは表示範囲の配分を変える操作であり、PRFやナイキスト限界そのものを変える操作ではありません。
まとめ
エイリアシングを理解するときは、「高速血流だから起こる」とだけ覚えるのではなく、次の流れで考えることが大切です。
ドプラ偏移周波数がナイキスト限界を超える
→ 装置が正しく標本化できない
→ 反対側へ折り返して表示される
そして、ナイキスト限界はPRFの1/2です。
PRFを上げる
→ ナイキスト限界が上がる
→ エイリアシングが起こりにくくなる
一方、測定深度を深くするとPRFを高くできず、折り返しが起こりやすくなります。
試験で迷ったときは、
- ドプラ偏移周波数が変わるのか
- PRFが変わるのか
- 表示方法だけが変わるのか
を分けて考えると、選択肢を整理しやすくなります。
一緒に少しずつ、超音波の基礎をつなげて理解していきましょう。
参考文献・参考資料
- 日本超音波医学会「医用超音波用語集」エイリアシング、ナイキスト周波数
- 日本超音波医学会「超音波による血管の標準的評価法」
- 長谷川英之.ドプラ法の原理と応用.超音波医学.2016;43:283-292.
- 日本超音波医学会 UlPath「超音波医学教育【基礎編 vol.4】アーチファクト」

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