超音波検査で肝臓や甲状腺などを観察すると、実質部分に細かな粒状の模様が見られます。
この粒状模様の形成に関係しているのが、スペックル(speckle)です。
こちらは文章問題としてもよく出題されていた印象。
基礎の講習会などでもスペックルメインというより、他テーマの中にさらっと入っているというか。
学会としては、しっかり覚えてほしい項目のひとつなのかなと思っています。
今回は、スペックルの発生原理と画像への影響、スペックルを低減する方法について、超音波検査士認定試験に向けて整理します。
スペックルとは?
スペックルとは、多数の微小散乱体から生じた散乱波が互いに干渉することによって形成される粒状の模様です。
日本超音波医学会の用語集では、スペックルパターンを「超音波の波長に比べて小さな散乱体群によって生じる散乱波の干渉による像」と定義しています。
ここで重要なのは、スペックルが単なる散乱ではなく、散乱波同士の「干渉」によって生じる点です。
散乱と干渉の違い
超音波が組織内部を伝播すると、微細な構造によってさまざまな方向に散乱されます。
そのうち探触子方向へ戻る後方散乱波が、Bモード画像の形成に関係します。
しかし、多数の散乱波は必ずしも同じ位相で戻ってくるわけではありません。
- 同位相で重なる場合:波が強め合い、エコー振幅が大きくなる
- 逆位相で重なる場合:波が弱め合い、エコー振幅が小さくなる
このような干渉によって、エコー振幅に強弱が生じます。
その結果、画像上に細かな明暗の模様が形成されます。
つまり、スペックルを理解するうえでは、散乱波の干渉が発生原理であることを押さえておきましょう。
スペックルは実際の組織構造を表している?
ここは試験対策として理解しておきたいポイントです。
例えば、肝実質のBモード画像では、細かな粒状模様が観察されます。
しかし、粒状模様の一つひとつが、肝細胞などの個々の構造と一対一で対応しているわけではありません。
スペックルは、多数の散乱波が干渉することで形成されるためです。
したがって、画像上の一つの輝点が、一つの微小構造を直接示しているとは限りません。
一方で、スペックルの性質は組織内部の散乱体の分布や音響特性にも影響されるため、組織の情報を全く含まないわけではありません。
スペックルと分解能の関係
スペックルの見え方は、超音波ビームの特性にも影響されます。
Bモード画像では、距離分解能や方位分解能などによって、識別できる構造物の範囲が決まります。
画像上の一定の分解能領域に多数の微小散乱体が含まれると、それぞれの散乱波が重なり、干渉によるスペックルが形成されます。
また、送信周波数やビーム幅などの条件が変わると、スペックルの大きさや分布も変化します。
そのため、同じ組織を観察していても、プローブや画像条件によって粒状模様の見え方が異なることがあります。
ただし、スペックルの大きさがそのまま実際の散乱体の大きさを表すわけではありません。
スペックルとノイズの違い
スペックルは「スペックルノイズ」と呼ばれることもあります。
しかし、装置内部で発生する電子雑音とは性質が異なります。
電子雑音は、主に電子回路などに由来する不要な信号です。
一方、スペックルは組織から戻ってきた散乱波の干渉によって形成されます。
このため、同じ組織を同じ条件で観察した場合、スペックルパターンには再現性があります。
ただし、プローブの位置や入射角度などが変化すると、干渉する散乱波の関係も変わり、パターンが変化することがあります。
スペックルは単なる電子雑音ではなく、超音波画像の形成過程で生じる現象であることを理解しておきましょう。
スペックルを低減する方法
スペックルによる粒状模様は、画像の視認性を低下させることがあります。
そのため、超音波診断装置にはスペックルを低減するための技術が搭載されています。
代表的な方法が、空間コンパウンド法です。
空間コンパウンド法
空間コンパウンド法は、異なる方向から超音波を送受信して得られた画像を合成する方法です。
超音波の入射方向が変わると、散乱波の干渉状態も変化します。
異なる方向から取得した画像を合成することで、スペックルによる粒状変動を抑えることができます。
また、空間コンパウンド以外にも、異なる周波数成分を利用する周波数コンパウンドや、画像処理によるスペックル低減技術があります。
ただし、スペックルを過度に低減すると、微細構造や境界の情報が失われる可能性もあります。
そのため、スペックルの低減と画像の鮮明さは、必ずしも同じ意味ではありません。
超音波検査士認定試験で押さえたいポイント
スペックルについて、まず理解しておきたい内容を整理します。
| 項目 | ポイント |
|---|---|
| 発生原理 | 微小散乱体からの散乱波の干渉 |
| 画像上の特徴 | 細かな粒状模様 |
| 実際の組織との関係 | 個々の輝点が一つの組織構造に対応するとは限らない |
| 画像条件との関係 | 周波数やビーム特性などで変化 |
| 電子雑音との違い | 組織からの散乱信号に由来する |
| 低減方法 | 空間コンパウンド法など |
特に、散乱と干渉の関係、スペックルと実際の組織構造の違い、空間コンパウンドによる低減原理を理解しておくと、関連する問題にも対応しやすくなります。
確認問題
以下は学習内容を確認するためのオリジナル問題です。実際の認定試験過去問ではありません。
問題1
スペックルパターンの発生原因として最も適切なのはどれか。
- 超音波の吸収
- 散乱波の干渉
- 音速差による屈折
- パルス繰り返し周波数の不足
正解
2:スペックルは、多数の微小散乱体から生じた散乱波が干渉することによって形成されます。
問題2
スペックルについて正しいのはどれか。
- 個々の輝点は必ず一つの細胞に対応する
- 送信周波数によってパターンが変化することがある
- 電子回路の雑音によってのみ形成される
- 超音波の入射方向が変わってもパターンは必ず一定である
正解
2:スペックルは散乱波の干渉によって生じるため、送信周波数や入射方向などによってパターンが変化することがあります。
問題3
スペックル低減を目的とした方法として最も適切なのはどれか。
- PRFを増加させる
- ウォールフィルタを調整する
- 空間コンパウンド法を利用する
- ドプラ入射角度を補正する
正解
3:空間コンパウンド法は、異なる方向から取得した画像を合成することで、スペックルによる粒状変動を低減する方法です。
まとめ
- スペックルは散乱波の干渉によって形成される
- スペックルは単なる電子雑音とは異なり、組織の散乱特性や超音波ビームの条件に影響される
超音波検査士認定試験に向けては、発生原理を理解したうえで、画像形成や低減方法との関係まで整理しておくとよいでしょう。
参考資料
- 日本超音波医学会「超音波検査士研修ガイドライン 第3版改訂版」
- 日本超音波医学会「超音波医学教育【基礎編 vol.4】アーチファクト」
https://www.jsum.or.jp/ulpath/el/eduwg_kiso04/ - 日本超音波医学会「医用超音波用語集」スペックルパターン
https://jsum.or.jp/terminologies/search?page=12 - 長井裕「エコー輝度と減衰,スペックルパターン」超音波医学,2009年
https://jsum.or.jp/journals/2746

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